人災も忘れた頃にやってくる

最近、ここが更新されないのは忙しいのもあるのだが、根本的にネタがないのである。「忙しいという字は心を亡くすと書くんだよ」とは、本当にうまく言ったもので、心に余裕がないと、世の中の観察や考察に頭を巡らせられないから、ネタを拾うことも出来ないのである。


というわけで、ここんとこプライベートはさっぱり面白みのない生活を送っていたというわけだ。


しかし、だからといって安心してはいられないのが「生まれ持ってのネタ体質」らしかった。平穏無事の生活は、ある日突然崩壊する。




土曜日に出勤し、結局打合せや作業などを重ねるうちに24時を回ってしまい、トボトボと歩いていた所、角で突然飛び出してきた自転車乗りの男性とぶつかってしまう。まあ、ぶつかったというか、こすったぐらいなので、怪我はたいしたことがないのだが、咄嗟の勢いの行動でお互い荷物をぶちまけてしまい、「ああ、ごめんなさいごめんなさい」と言いながら、散らばった荷物を拾いあった。そして、そのまま「ごめんなさい、本当に」とお互い挨拶して、別れたのだった。


そして数分後、家にたどり着いた私はケイタイを充電しようとしてギョッとした。




「これ、機種一緒だけど、私のケイタイじゃない(笑)。」




さあどうする、こまったぞ...................って、まあとりあえず自分のケイタイが多分ぶつかった人の手元にあるわけだから、電話をかけるしかないよね、ってことで早速発信。




留守電。




マジ(笑)?




個人ケータイならまだしも、入れ替わってしまったのは会社のケータイ。会社のメールを転送しているから、色々やばい情報もあるんだが、さあ、どうする?と、結構焦り始めた所に、突然手元に電話に着信が。画面に表示されているのは女性の名前。


うーん、ここで女性である私が出たら、かなり色々もめそうな気もするが(笑)、どうしようもないので出る事に。今の私は、ケイタイが手元に戻るなら何だってすがりたい。
こへだ「はい、もしもし」
向こう「え?あら?やだ、○○さん?△△の母ですけど、△△は?」
こへだ「あ、いえ、あの、私はこのケータイを拾ったものでして、今、この持ち主の方と
    連絡をとる方法がないかと思っていたんですが。」
向こう「...................何言ってるの?」
こへだ「ですから、先程、このそちら様がかけていらっしゃる携帯電話を、本日拾いまして
    おそらく、私の携帯電話と同じデザインだったために、入れ違ってしまった為に
    私のケータイが、この持ち主の方の手元にあると思うんです。ですが」
向こう「あなた誰?○○さんじゃないの?△△は?」
こへだ「いや、だから」
向こう「ああ、もういいわ、とにかく、来週の結納について打ち合わせの電話を早くよこしなさいと
    △△に伝えておいて頂戴。」
こへだ「ちょっとまったあああああ!!!切らないでくださいっっっっっっっ!」
向こう「え?」
こへだ「あの、△△さんのお母様なんでいらっしゃいますよね?」
向こう「だからさっきからそう言ってるじゃない。」
こへだ「私は、今日、その△△さんのケイタイを拾ったものなんです。
    で、早くもとの持ち主△△さんに戻してあげたいんですが、連絡する手段がないんです。
    だから、お母様の方から、何とか連絡することは出来ませんか?」
向こう「.....................そういうことなのね。ごめんなさいね、イライラして。
    どうも○○さんとそりが合わないものだから、いつものとおりに......」
こへだ「...............(早速嫁姑問題なのか、この家)。あ、で、その△△さんに
    連絡をとっていただくことって可能でしょうか?」
向こう「そう、そうね、自宅の留守電があるから、それに入れておいてあげるわ。
    で、自分の携帯電話に連絡すれば、あなたと連絡取れるわよね?それでいいかしら?」
こへだ「ええ、それでお願いいたします。どうもありがとうございます。」
向こう「じゃあ、そうするわ。色々ごめんなさいね。」
こへだ「コチラこそ、お願い事ばかりで申し訳ないです。よろしくお願いいたします。」



電話終了。一瞬ドキドキしたが、何とか話は進んだ様である。しかし、この携帯電話の持ち主、来週に結納を控えているのにも関わらず、親に連絡していない模様。大丈夫なんかいな、ほんとに。



と、思っていたらまたケータイに着信。しかし、また画面に出ているのは女性の名前。しかも、母じゃない(笑)。いやーん、修羅場っちゃうのかしら、何ぞと怯えつつ(いや、楽しみつつなのか)電話に出てみる。


こへだ「はい、もしもし」
向こう「あ、あのっ」
こへだ「はい、あ、エーと、私はこのケータイを拾ったものでして、怪しいものでは」
向こう「あ、いえ、そうなんです。今、彼の家にいるんですけど、家電の留守電聞いて、で、かけたんです。
    彼、もうすぐ家に戻ってくると思うので、そしたら、連絡するとかでもいいですか?」
こへだ「ほんとですか?ありがとうございます!いや、実は、先程その方と道端でぶつかってしまって
    それで多分ケータイが入れ替わっちゃったみたいなんですよ。だから、多分私のケータイを逆に、
    お持ちだと思うんですけど..........」
向こう「え〜〜〜!そうなんですか!じゃあ、急いだ方がいいですよね。」
こへだ「自転車にお乗りになってたので、もし近所であれば、コンビニとかで待ち合わせて交換とか
    早いうちに出来るといいんですけど..........」


と、お互いの場所の確認をして、意外に近い事が発覚。コンビに出待ち合わせることに。



数十分後。




女性「あのー」
こへ「あ、ケータイ、ですよね?」
男性「すみません、ほんとに.........」
こへ「いや、コチラも不注意でしたもんで。」


あはははは・・・・・・・・・・・・・(暫しお互い乾いた笑い)


こへ「あ、そういえば来週結納だそうですね、おめでとうございます」


二人「...............。」


こへ「え?」













女性「どういうこと?」
男性「いや、あの、その、えーと」
女性「どういうことなの?」




これって。
もしかしなくても、わたし、不用意な発言しちゃいました(笑)?
今目の前にいる女性、結納相手とはまた別の人?





いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。





と、悪いことは続くのだ。



BBBBBBBBBBBBBB.......................着信バイブの振動が。
こへだ「あ。あ、あああ、ああの、電話、かかってきてます」




なんとその電話こそが結納相手(笑)。





と、折りしもそこは何でも売っているコンビニ。目の前の女性は、ブルガリアヨーグルト(無糖)500mgパックを手にとり、蓋を開け、銀紙をはがし、男性に向かってぶちまけた。




男性、はかり知れないダメージを受けている!




女性は、くるっと振り返って、様子をうかがっているコンビに店員に言った。
「この人が。」

一息ついた。


「この人が、商品代も、掃除代も、払いますから。」



彼女はそして、悠然と去っていってしまったのだった。





残された私、気まずい。
モーレツに気まずい。
なんと言おうと気まずい。




「あの、とりあえず、ケータイ返してほしいんですけど。はい、あ、ども。じゃ。」







こへだ、去る。





後はどうなったか知らない。
ちなみに、ケータイを渡す前に着歴などは消したので、もはやわたしに連絡する手段などないだろう。




木枯らし一号が吹いた日の、夜の事件であった。