カクテルグラストリック

トリックも何も無い話であると先に断っておくが。使い古された手としてよく話に出てくるアレの話である。


遊び人の男が、全くすれてないウブな女の子を頂いちゃおっかなーっていう時に、男はまず雰囲気のいいバーに連れて行く。でもって「ここはとにかくカクテルの種類が豊富なんだ。美味しいお薦めのがたくさんあるから是非飲んでみて」なんて勧めてみる。そして、そんなバーにきたことも無ければ、カクテルなんてモノを飲んだことの無い女の子は、お酒にも弱い。カクテルなんて出されてどうしようかしらなんて思っちゃっている。


そこですかさず男は「お酒弱いんだったら、グラス半分までで良いから。残った分は僕が飲むからさ。ホラ、飲んでみなよ。」なーんて甘い笑顔で言ってみる。当然頼まれるのは飲みやすいけれどアルコール度数の強いカクテルばかりだが、その事を女の子は当然知らない。もちろんカクテルグラスは円錐をひっくり返したような、マティーニなんかが注がれるようなタイプのやつだ。カクテルは男の言う通り美味しい、でも「確かにお互い半分ずつ」飲んでいるはずなのに、自分だけがどんどん酔っ払っていく事に女の子は気付くが、それは自分がお酒に弱いからだろうと納得している。


そしてとうとう女の子は潰れてしまい、可哀相に、後は神のみぞ知る...........



というアレだ。




もはやこのネタ「女の子騙してカクテルをグラスの深さ半分まで飲ませるアレ」で「ああ、アレね」と誰もが共通認識をもてるぐらいになっていると思う。要はこれって「グラスの半分まで」に引っ掛けがあり、確かにグラスの深さ比は半々なのだが、体積比では半分ではないが為に、常に女の子のほうが多く飲む羽目になり、潰れてしまうという理屈である。


で、この話前々から知ってはいたものの「実際に体積比としてどれぐらい違うのかねえ」と、何故か今日突然思ってしまったのだった。こうなったら計算するしかない。




ちなみに円錐の体積の出し方なんて忘れたよ、という方のために一応おさらい。
底面(この場合時は上面)の半径×底面の半径×高さ(この場合は深さ)×円周率(以降Π)÷3
ですね。で、ここでは計算しやすいように「上面の半径=2b」「高さ=2a」とする。



まず、カクテルの分量であるが
2b×2b×2a×Π÷3=8/3ab^2Π
となる。


それから、今度は男が飲んだほうの分量だが、深さ半分なので上面の半径も半分だ。よって
b×b×a×Π÷3=1/3ab^2Π
となり、全体の分量から男が飲んだものを引いた分量が女の子が飲んだ量だから
8/3ab^2Π−1/3ab^2Π=7/3ab^2Π



つまり、飲んだ量は
男:女=1:7
である。



うーん、今までこんなネタ真剣に考えた事が無かったから気付かなかったが、7倍も違うのか。ものすごーく漠然としたイメージでせいぜい2倍か3倍だと思い込んでいた。考えてみれば体積は基本乗算を3回だから、全体的に2倍にした瞬間に8倍に跳ね上がってしまうのは当たり前なのだが。まあ、そうやって常に7倍量飲まされていたら、女の子の不利は否めないね。








で、ここまで計算すると気になってくるのが
「じゃあ、どれぐらい飲めばお互い半分半分になるのか」
ということであろう。(気にならんよというつっこみも受けそうだが、私は気になってしまったのでしょうがないってことで)



さて、今度は「底面の半径=p」「高さ=q」としよう。そして、男性が飲む分の上面の半径をxとしよう。


まず、カクテルの分量であるが
p×p×q×Π÷3=1/3pq^2Π
となる。


さて、男性が飲む分の上面の半径がxだとしたら、男性が飲む分の深さを例えば一時的にyとおいた時に
b:x=a:y であるので
y=a×x/b
となり、よって男性が飲む分量は
x×x×(a×x/b)×Π÷3
であり、これがカクテルの分量の半分であればいいわけだから
x×x×(a×x/b)×Π÷3=1/3pq^2Π÷2
で、面倒くさいので間の計算式をふっとばす(笑)と
x^3=1/2b^3
となる。


で、別に数学をやっているわけじゃないので、この際乱暴にb=2とでもおいてみる。
すると
x^3=4
となり
x≒1.59
である。


まあ、この際さらに丸めて1.6としておこうか。
ここで、b=2としたわけだから
x:b=1.6:2=4:5=a:y
となり、男性はグラスの深さの大体4/5を飲んだ時に、初めて女性と半々になる。


逆にいえば、女の子はグラスの深さの1/5位しか飲まなくてよくて、それ十分に半分なのだ。




.............ええと、今「ええ、それじゃ飲み足りなーい」と思ったそこの酒豪のお嬢さん、あなたはこの件に関して「女の子」にカウントされてないから安心して頂いて結構(笑)。




というわけで「俺が残り半分飲むからさ」といわれたら、グラスの深さの1/5にとどめておくのが正解なのであるが、まあ





そんなことを知っている女は口説かれない





ので、やはり根本的に関係ない話として捉えておいて良いのだと思う。あと、今後円錐形のカクテルグラスが出てきたときに「ここまでで半分なんだ〜」などとしげしげと観察するのも止めたほうがいいと、私は思う。但し、目の前の男が非常にウザイ文系男であったらば、黙らせる手段として使うのはまあありだと思う。




で、最後に疑問なのだが、本当にこういう事をして女の子を口説いた男って、「本当に素でネクタイを頭に巻いている酔っ払い」ぐらい、実際にリアルにはいないんじゃないかと思えるのだがどうなんだろう。ま、どうでもいい話だ。ほんとうに。