母さん、ぼくのあの睡眠時間

仕事に疲れた人たち同士で合作しあった結果大作になり、もったいないので掲載でもしておこうかと思う次第なり。

母さん、ぼくのあの睡眠時間
どうしたでせうね?


ええ、オフィスから得意先へ行くみちで、
会議室で落とした
あの睡眠時間ですよ


母さん、あれは好きな時間でしたよ
僕はあのとき、ずいぶんくやしかつた


だけど、いきなり無理が降ってきたもんだから


母さん、あのとき、向こうから
訳の分からない担当者が来ましたっけね、
問答無用という難題を持った。


そして、ずいぶん行く先を断ってくれましたっけね。


だからたうとうだめだつた
なにしろ重い空気で、
それに圧力が朝の山手線ぐらゐ
満ちていたんですもの


母さん、ほんとにあの睡眠時間
どうなつたでせう?


そのとき傍で話していたスーツの兄さんは、
もうとうにやつれちやつたでせうね。


そして、秋には、灰色の霧があのビルをこめ、
あの睡眠時間のかわりに毎晩
携帯が鳴ったかもしれませんよ


母さん、そしてきつと今頃は


今夜あたりは、あのごみ函に、
静かに企画書が降りつもつてゐるでせう


昔、ふつうに摂れた、あの穏やかな睡眠時間と、
その代わりに僕がした打合せといふ現実を埋めるやうに、
静かに、寂しく....

西條八十万歳。


そして今日も何時に帰ることが出来るのか読めない。
とりあえず今は27時20分。