「サル腕」考

「サル腕」とか「サル手」といわれる状態がある。


 腕をまっすぐに伸ばして両手を合わせる、或いは手のひらを上に向けたときに、肘から先がくっついてしまう状況だ。バレーボールのレシーブでもいい。普通は胸から手首に向けて三角形に隙間が空くのに、肘から先手首までがくっついて一直線状態になるのがサル腕といわれる状況だ。

 ちなみにサル腕だと「きをつけ」をした時に、肘が内側に曲がってくるので、普通ならばウエストの辺りで左右に半月状の隙間が開くのに、ウエストのくびれに沿ってぴったり肘がついてしまうので、隙間がなくなってしまう。そのほかにも、逆立ちや腕立て伏せをするために腕を地面に着くと、逆Yの字のように腕の開きが広がった状態になってしまうとか、色々ある。




まあ、要は「腕が180度以上に開く」状態である。




ちなみに私もサル腕の持ち主だが、角度にして200度程度開く。
まあ、ぶっちゃけキモい。
正直キモい。



 さて、大学の人間工学の授業で(私は工学部にあるデザイン学科だったので、そういう授業があったのだ)そういった骨格関係の話があって、当然のことながら骨格標本君もいたわけだが、ふと教授に聞いてみたことがあった。

 「私、こんな風に(といって腕を曲げつつ)あらぬ方向まで腕が曲がるんですけど、それって骨はどうなってるんですか?」てな具合に。そうすると教授は「ああ、肘の関節は穴と出っ張りが蝶番状に組み合わさっているんだけど、それのでっぱりが小さいか、あるいは穴が大きいかすると、きちっと止まらないから曲がりすぎちゃうんだな」と答えたのだった。

 その当時はそれで納得してそのまま終わりだったのだが、本日ふと「で、体のなんていう名称がでかいか小さいかしてサル腕になるんだっけ?」と気になりだし、調べ始めた次第なのである。



<以下、自己満足な内容故飛ばし読み推奨>
 肘関節(ちゅうかんせつ)は、上腕の上腕骨、前腕の橈骨と尺骨の3つの骨の組合わせにより成り立っている複関節である。基本は腕の屈伸に使われる関節なので、分類状は1軸性の蝶番関節と言える。
 但し、腕の屈伸に使われる関節は細かく言えば肘関節の中でも腕尺関節という、上腕骨と尺骨で成り立っている関節である。一方、上腕骨と橈骨の組合わせによる上頭尺関節は、前腕の回旋に使われる。
 サル腕とは要は「肘の関節可動域角度」が一般よりも広い場合を言うのであるが、その原因となるのが腕尺関節の組み合わさっている部分「上腕骨滑車=でっぱり」「尺骨滑車切痕=穴」のお互いの大きさが合っていない状況である。

  1. でっぱりである上腕骨滑車が小さいゆえに、穴の尺骨滑車切痕に突っ込みすぎてしまい可動域角度が広くなる
  2. 穴の尺骨滑車切痕が大きいゆえに、でっぱりである上腕骨滑車が回りすぎて可動域角度が広くなる

のどちらかだ。
 ちなみに、前腕の回旋に使われる上頭尺関節は「上腕骨小頭=でっぱり」「橈骨頭腕橈切痕=穴」が組み合わさっており、 コチラも大きさが合っていなければ、回旋範囲が大きくなってくるが、コチラは目に見えて認知できる状況ではないので、サル腕などといった俗称はついていない。



で、結局ここまで調べてもなぜ「サル」腕と呼ばれるのかはいまいちよくわからないのだった......。サルってデフォルトで関節可動域角度が広いのか?
<参考>はてな検索にも情報が:http://www.hatena.ne.jp/1118196766