母と鳥の戦い

ベランダでの園芸を密かな楽しみとする母(但し育てているのはシソとネギと水仙と桔梗とゆきやなぎアロエ、その他サボテン類というよくわからない組合せ)に、最近強敵が現れたらしい。

ドバト。

どうも、ベランダに降り立っては土を穿り返し、散々いたずらした挙句去っていくというろくでもない輩らしい。しかし、ここで泣き寝入りする母ではない。思い立ったが吉日とばかりに、暇さえあれば東急ハンズの「獣・鳥害対策コーナー」に通いつめ、対策を講じていた。そして、その調子で調べものをしまくったらしく、いまや「都会のマンションにおける獣・鳥害対策マニア」と化していた。

そのマニアッぷりは、息をもつかせない1時間トークで証明された。まあ、私にとっては未知のジャンルだから聞いてて面白いんだけど、1時間しゃべりつづけられるというその熱意を、そんな対象に向けるべきなのかどうかはやや疑問だと思った。しかも、
「対策を講じる」
   ↓
「ハトがこなくなる」
   ↓
「ハトが学習してまた来るようになる」
   ↓
「次の対策を講じる」
というサイクルを考えた時に、5年ぐらいは持つんじゃないかというそのバリエーション知識はどうなのよと思った。当然その間にも、世間の対策術はさらに増えそうだし。

ていうか、もはやベランダの植物達を守ることが目的ではなく、対策マニアとして「プランを実施する」ということに既に目的が移行してるだろう、母、と思った。絶対「次のプランを実施したいからさっさと今のやつに慣れてくれないかしら」とか思ってるに違いない。

しかし「毒団子がね、一番効くと思うのよ」という発言にはびびった。ゴキブリじゃなくて、鳥にもあるんですかそんなの。「へえ〜へえ〜へえ〜」とか言ってる場合じゃないけどちょっと感心。「でもね、ほらいまこういう時期(鳥インフルエンザ)でしょ、そんなことして道端にドバトが落ちてて疑われたら嫌じゃない。」まあ、そうだな、確かに止めた方がいいかもね、と思っていたら母が言った。



「だって、道にドバトが落ちてても自分の成果なのか、はやりやまいなのか区別つかないなんて面白くないでしょう?だから、落ち着いたら試そうと思って。」



.............この親にしてこの子ありとは言われたくないと思った娘、27歳独身会社員。