川が呼んでいる

mixi渋谷川コミュニティが有るのを発見し、そちらに登録するに当たって久しぶりに渋谷川について色々調べたりしていた。


渋谷川と言うのは、あの童謡「春の小川」のモデルにもなったといわれている。まあ、正確に言うと「渋谷川と途中で合流する宇田川」が春の小川のモデルなのであるが。
で、渋谷川というだけあって、いわゆる渋谷を流れている川だ。ほとんどはコンクリートで蓋をされて暗渠となっている部分がほとんどだが、東急東横線渋谷駅の線路脇あたりから、蓋が外れ、川の姿を拝む事ができる。東京に流れていた川の多くが埋め立てられてしまった中、渋谷川と言うのは例え暗渠であれ「水が流れている状態」が保持されているという意味でも貴重だと思う。


渋谷川と言うのは、源流を辿ると新宿御苑内の池に行き当たる。そこから、途中玉川上水の支流と合流したり、源流を幡ヶ谷あたりに持つ宇田川と合流したりしつつ、どんどんと大きい流れになっていく川だ。


新宿御苑内の池から発生した流れは、新宿御苑の大木戸門あたりを通り、千駄ヶ谷2〜3丁目あたりから、現在の明治通りにほぼ沿うようにして(実際に、明治通りから裏通りを一本入ると暗渠にすぐ出会うことができる)流れていく。


一番暗渠っぽい感じが出ているのが原宿のキャットストリートといわれる部分に当たるだろう。ここは正に「蓋をしました」という様相である。そして江戸時代の頃このあたりは、豊富な水を利用して水車が立ち並ぶ一帯で、そこから見る富士山の様子が「隠田の水車」として葛飾北斎の富岳三十六景に収められている。ちなみに、キャットストリート近くに存在する神宮前小学校には、その名残として校庭に水車が存在している。

余談だが、その水車は渋谷川に合流する湧き水(水源は表参道にあるユニオン教会あたりらしい)からの流れによって回っていたのだが、表参道に千代田線を開通させた時にほとんど水源が絶たれてしまった為、水道と湧き水からの流れによる水のダブルで回すように途中から変更された。そして、現在建設中の表参道ヒルズは地下6階だかなんだかまで掘っているそうなので、おそらく水源は完全に絶たれてしまうだろうと思われる。まあ、残念な話だ。


その他、渋谷川周辺の話は色々な方のサイトで既に展開されているので、そちらを確認されることをお薦めする。

   東京の水(1997):Honda Soさんというかたが展開
    →http://www.kt.rim.or.jp/~yami/tokyowater0.html
   渋谷川を再生させようという動きもある(NPO渋谷川ルネッサンス)
    →http://www.shibuyagawa.net/index2.html
    →http://www.janca.gr.jp/ageing/jp/sedit/0101_0403.html
   こんな写真集も
    →http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840100888/250-9231346-0123442


では、何で私がこんなに渋谷川に執着しているのかということを説明しよう。


単純に言えば、生まれ育った地域的になじみが深いからだ。生まれてこの方、家を出るまで25年間位住んでいた実家は、渋谷川の水源に当たる新宿御苑の敷地まで100Mも無いような距離にある。そしてその家から、途中正に渋谷川の暗渠の上を通って神宮前小学校まで通い、放課後は遊歩道(キャットストリート)で鬼ごっこやら何やらをして遊んでいた。


とまあ、これぐらいであれば「長年親しんだのね」ぐらいで終わってしまうだろう。ところがである。


25歳ぐらいになり「いい歳して、いつまでも実家にいないで独立しろ」と親にたたき出された私は、実家を出てから2年間で7回も引越しをした。様々な理由により、全く定住できなかったのである。そしてようやく、今の住居に落ち着いてからは4年目に突入しているのであるが、あるときひょんなことから渋谷川を調べていて愕然とした。




新宿御苑を発祥とする渋谷川は、そのまま流れつづけた結果、途中で古川と名前を変え、最終的には浜松町方面へと流れ、東京湾へと流れ込んでいく川だったのだ。そして、私が正に今住んでいる家は、古川を麓とする丘の上に建っているもので、古川の暗渠まで10分も歩かずに到着するのである。



これに気付いた時「結局私は渋谷川沿いにしか安住できないのか(笑)」と思わずにはいられなかったのである。まあ、偶然では有るだろう。だろうが、なんとなく川が呼んでいたような気がしてならないのである。偶然では片付けられない何かが、人と川にはきっとある。迷信だろうと笑われる方が多いだろうが、私は、何かあると思いたい方の人間なのだ。



そんなことを思いつつ、古地図を眺めつつ、水量豊かだった頃の渋谷川に思いを馳せてみたりするのである。




そろそろ渋谷川に合流する河骨川の源流、明治神宮内の清正の井戸から続く菖蒲園が見頃の頃だ。数年ぶりに、行って見ようか? →http://www.meijijingu.or.jp/whatsnew/syoubu/syoubu.htm