母とハムスターの想い出

ある日、私が実家に帰るやいなや、母が嬉々として私をベランダに連れて行った。


母は園芸を日常の生業の1つとしている。ガーデニングなんてそんなおしゃれな物ではない。なぜなら「美しく庭(ベランダ)を整える」という意思がほとんど介在していないからだ。あえて意思があるとしたら「目の前にある植物を全部大きくしたい」という事ではなかろうか。その証拠に、名前のわからないモノが生えてくると、図鑑で判別できるようになるまで(花が咲くとか、特徴的な葉っぱが出るとか)雑草であろうとなんであろうと育てている。

なまじ、近くに新宿御苑があるだけにヘンな種が風に乗って飛んで来やすいし、まあ母の天敵であるハト(http://d.hatena.ne.jp/tsubuyaki_koeda/20040317#p3)が運んできてくれる事もあるだろうから、バラエティには富んでいる。もっとも「このごろ、新種が来ないからつまらない」とぼやいていたのもまた事実だが.....期待するなよ。


あ、で、そう、母は私をベランダに連れて行くと、嬉々として言った。
「見て!このベゴニア!すごいでしょう!」


実家で育てているベゴニアと言うのは、センパフローレンス系の品種(参考:http://www.begonia-net.com/db/senp/senp-index.html)で、花の大きさは大体直径2〜4cmほど、葉っぱの大きさも3〜5cmほどの、小ぶりな植物である。


それがだ、3鉢あるベゴニアのうち、母が自慢気に指差すベゴニアは、葉っぱの大きさが全て優に10cmは超えていた。すごい物だと手のひらぐらいの大きさだった。


なんですかこの異常巨大ベゴニア。
す、すごいっていうかもはや不気味なんですけど、と思って恐る恐る母を見た。





「あのね、この鉢に、コロを埋葬したの。そしたら育っちゃって〜♪」





桜の下には死体が埋まっている。
ベゴニアの下には屍骸が埋まっている。




私はこのときほど血の繋がりを恐怖に思った事は無かった。



さて。本日、母からハムスターについてのメールが来た時に、思わず末尾に付け加えてしまったのは、人間として当然の行為ではないかと思う。
「寒太郎はベゴニアの下に埋めないように。」
しかし、これを書いていて気付いた事がある。忠告通り、母はベゴニアの下「には」埋めないかもしれないが(以下略)




いや、気付かなかった事にする。