ニュースの序列

テレビも新聞も見ず、ネット上だけで世の中の情報を獲得しようとしたらどうなるか。まあ、もう既にその状態の人もいるかもしれない。私も、生活状況によってはそういう状態に陥る。新聞なんて開いている暇が無くて、テレビをつけてもニュースじゃない時間帯にしか家にいないような時だ。(私は仕事上パソコンに向かっている時間が多いので、ふとした時間にネットでニュースを見るぐらいは出来る。)


 2002年の夏から秋にかけての数ヶ月間、正に私はその状態にあった。結論から言うと、情報には困らない。困らないが、時に世の中から置いていかれることがあった。ネット上には、テレビで扱われないようなニュースまでがすべて掲載されていると言うのに、そんな自体が何故起こるというのか。



 私が正にニュースソースをネットだけに頼っていたような時期、世の中では北朝鮮拉致事件の話題で持ちきりだった。私はネット上で、北朝鮮拉致被害者たちが判明しただのしないだのの話は認識していた。しかし、詳しくは知らなかったし、今正にどういう盛り上がりを見せている話題なのかは知らなかった。だから、ある日携帯に届くニュース速報で「5人目は曽我ひとみさん」という1行を見ても、「......はいぃ?」と当惑するしかなかった。ハロープロジェクトモーニング娘の妹分である、新しいユニットにオーディションで決まった5人目の子が曽我ひとみちゃんなのかと思ったぐらいだ(笑)。「またユニットふやしたのか......」と、当たり前のように思ってしまったのだった。


 つまり、私は「北朝鮮拉致被害者が判明しつつある」と言う情報はつかんでいたものの、「誰もが北朝鮮拉致被害者の5人目の情報を今か今かと待っている」という世間の波を認識していなかったに他ならない。「5人目」と言えばその当時誰もが「ああ、北朝鮮の」と返すような盛り上がりと関係ない世界に私は住んでいた。だから、5人目といわれてもなんのこっちゃ、と思ったというわけだ。


この状態は正に「ネット上ではニュースの序列は時系列」と言うものが生み出している。ネットニュースには、主要ニュースはあれどもトップニュースは無い。そして主要ニュースも、時間ごとに最新の情報へと刻々と変わって行くから「この一週間で一番の大きなニュースが何か」と言うことは実はわからないのだ。

ネットに表示されるニュースは全て、並列関係に受け止めてられてしまう。テレビでは扱い順番と扱い時間の長さでニュースの大きさを測れるし、新聞は紙面への登場順と、紙面を占める面積でニュースの大きさを測れる。雑誌なら、中吊り広告内でコピーの占める面積といった所か。しかしネットニュースは同じ大きさのフォントで並ぶだけだ。順番は、ほとんどが時系列だ。古くなれば入れ替わる。「事件に大きいも小さいも無い!」(笑)を、地で行ってしまうというわけだ。


ニュースに序列をつけるとしても、、並列に並んだニュースに対して注目度の高低をつけるのは自分自身に他ならない。自分の判断基準、はっきり言って好みで最近の注目ニュースを決めてしまう。だから、テレビや新聞で大きく扱われ、世の中みんなが注目している事件は何なのか、ということが非常にわかりにくい。

 最近であれば、ジェンキンスさんの話も、杉田かおるが100キロマラソンを走るらしいという話も、プロ野球1リーグ制の話も、女子バレー代表が小泉首相とトス回しをしたという話*1も、皆同じレベルで目に入ってくる。


 そういう意味で、かねてから私はネットニュースの「週刊誌中吊り広告化」が実現しないのかと常々思っていた。大きいニュースは赤くて太い字で大きく、B級ニュースは黒くて細い字で小さく、みたいな感じだ。ただ、これはちょっと考えても「かーなりムリじゃないか?」というのがわかるのでさっさとあきらめる。でも、出来たらいいなあ、いいなあとはいつも思っているが(笑)

 それにしても、今の時代多くの人たちがネットニュースに頼った生活をしていると思われるが、同じ状況に陥ったりはしていないのだろうか。日本に新しい単位「へえ」が出来たとか知っているんだろうか?考え出すと止まらない。ネット依存者が決める今年の10大ニュースはマスコミの決める10大ニュースとは違うのではないか。「ネット依存者が決める今週の中吊り広告」なんてものがあったら面白いかもしれない。



そんなろくでもないことを考えてしまう私が、割と愛用しているニュースサイトが「goinfo.to*2」である。


goinfoは、独自のクローリングロボットを持ち、ニュースサイトへ定期的にクローリングを行っている。その分析データをもとに、キーワードごとの登場頻度、複数ソース、複数記事間での重複頻度、鮮度といった情報を加味した、独自ポイントを作成。さらに、キーワードのポイントをもとに、ニュース記事のポイントも計算。その結果をランキングという形で提供してくれている。

分析処理はすべて自動(初期のニュースサイトの選択という点以外には)、情報の人為的・作為的な選別やクローズアップは行われない。故に、インターネット上のニュースサイトが着目しているトピックスに関するデータがそのままの形で登場するというわけだ。


つまりgoinfoは、ニュースサイトで公開中のニュースから、今もっとも旬なキーワードとニュース記事を選び出して、そのニュース記事へのリンクをリアルタイムで提供しているサイトなのだ。


ってことは???
そう。かなりの線で、中吊りモードに近いというわけだ。まあだから愛用しているわけだが、この度新たなニュースサイトも巡回先に入れてみた。「News&Blog SEARCH*3」である。


これは、「goinfo.to」の巡回先にblogを入れ、さらにニュース記事へのクリック数まで変数に入れて表示を変えていくサービスである(すごく乱暴に言うと。正確には違うのだが、書くのが面倒くさいので自分で理解してください.....)。個人的な興味を色濃く反映してくれるところが、私としては不便なのだが(普遍性がなくなるからね)、注目を行為で表した「クリックカウント」を変数に仕込んでいるところが、ますます「中吊り感」の精度を上げているように思われる。

しかも、blogを巡回先にあげているということは「ネット上の人が興味を持ってリンクを張った」ニュースが上位に上がって来やすいという事に他ならない。


まあ、blogに載っている情報が、必ずしも世間一般の注目とイコールの物であるとは限らない。ネットでのみ大流行しているアングラ的な情報が、上位に来やすくなっているのは想像に難くない。でも、そういって切り捨てるのは勿体無い。これから年月をかけて、ネットニュースサイトというものは、もっともっと進化を遂げていくはずで、このサイトはその一歩であると思うのだ。



とりあえず、テレビが無い生活を送っている私としては、結構重要な問題なのだよ、ネットニュースサイトにおいて、世間の話題の大きさを推し量るという行為はね。