立ち直りの早い男

「女は立直りが早い」。
通説である。


フラれてもすぐ復活してくるのが女で、いつまでも引きずるのが男だと言う。 それを称して、女の強さだとか、男の純情だとか呼んだりする。


でも、現実には立直りの早い男もいるし、いつまでも引きずりっぱなしの女もいる。 私一個人においてでも、未だに延々と引きずっている恋愛もあれば、 既に早々に立直り、忘却の彼方へと消え去った恋愛もある。 だから、じつは恋愛からの立直りの早さなんて、個人差にパターン差が加わって、 複雑奇怪な状態なのを、みんな頭では分かっている。


でも、人は言う。
「女は立直りが早い」。


だれが言い出したのかはわからないけれど、合っている様な気もするし、 合っていない様な気もする。 判断がつかないのは、要は根拠が無いからだ。

というか、そもそも根拠って何だ。A君とBさんが別れた後、立ち直る迄の日数を実録でカウントして比較。 そんなサンプルを沢山採って、統計的に示すのだろうか。

だいたい、立ち直る日っていつだろう。気象庁開花宣言とか、政府からの安全宣言みたいに、ある日突然声高に、 「本日私は立直り宣言を表明します」とでも言うのだろうか。

そうやってデータがどんどん貯まっていって、ある日のニュースか何かで、 「今年も2年連続で男性の立直り度が前年比120%となり、20%向上しました。 この成長率が続きますと、2013年には男性が女性の立直り度を抜く事になります。」 とでも放送されてしまうのか。


ありえない。


じゃあ、逆に「男は立直りが早い」はどうなんだろうと考えると、 あんまり納まりが良くない気がしてきた。


何だかんだ言っても、現実的には、男の方が体力的には優っているわけだし、 社会的立場も男の方上にあることが通例だろう。その男が、失恋の立直りまでも早いんだとしたら。 ステレオタイプに頭に浮かぶのは、「泣いて落ち込むいたいけな女性が取残されたまま、 男は次の女に手を出している」状況。でもって、まあ、世の中はそんな男ばっかりである、と。


これはいかん。


どう見ても、世の中ドライで遊び人な男ばっかりに思えてくる。 男の純情なんて語る余地は全く無い。印象が悪い。 男のイメージ戦略として失敗し過ぎである。


しかも、そんな世の中だったとしたら、女性誌やらワイドショーやらによく登場する 「だから男はダメなのよ論」をふりかざすオバハンを増長させるだけなのであって、 女側としても多大なるイメージダウンである。まあ、ああいう煩いオバハンは女じゃないという説もあるが、これをここで語りだしたらキリがないのでやめておく。


ああ、よくないよくない。


美しくない。



そう、だからやっぱり立直りが早いのは女じゃ無くてはいけないのだ。 男は純情を盾にちょっと可愛げを出してみたり、女はいさとなれば開き直りの強さもあるのよ、と潔さを示したり。


この方が世の中うまくまわるのだ。


ステレオタイプな物言いは良くないと言われるが、良くないくせに残るのは何故なのか。それは多分、ステレオタイプな物言いが、 何かしらの真実を表しているのがどうにも否めない事なのだからではないだろうかと、そんなことを思うのだった。


まあとりあえず、女である私がやけに立ち直りが早くっても、責められる事は無さそうだと思うのだがどうなのだろう?